最近私がとてもハマっている動画がありまして…
マイケル・ハイザー(Michael Heiser)と言う、宗教学者/聖書学者の一連のドキュメンタリーやレクチャー動画です。毎晩時間があると、ひたすら見入っています。
ハイザー氏は聖書を現代の西洋キリスト教的視点から読むのでななく、聖書が書かれた当時のヘブライ文化や宗教観に沿って読むべきだと主張し、聖書解釈に新たな風を吹き込みました。難しく複雑な神学を一旦脇に置いて、聖書を書いた人々の価値観や文化的歴史的な背景に立ち返って、(これを彼は「裸の聖書」と表現します。)書かれていることを読んでいく。それによって聖書の神秘的な側面がクローズアップされ、多くの反響を得ました。残念なことに昨年惜しくも癌で亡くなられたようです。享年60歳でした。
数々の著作があり、youtube上に数々の動画がアップされています。テーマは多岐に渡り、見えない領域(霊界)、天使や悪魔、UFOのことまで!残念ながら日本語では訳されておりませんが、自動翻訳の日本語字幕と英語字幕を交互に見ながら、なんとか理解できます。いわゆる都市伝説系とも言えるテーマを、聖書にしっかり根ざし、ヘブライ語に忠実に細やかに読み込んでいきます。都市伝説ネタというのは基本「反キリスト教」的なメッセージが託されているので、逆にそのテーマを聖書に立ち戻って解釈することで、聖書のストーリーやその世界観の特異性を浮き彫りにしました。
代表的なのは「エロヒーム」という単語についての解釈です。聖書には「神」を表す言葉として「ヤハウェ」と「エロヒーム」が使われておりますが、「ヤハウェ」はきっちり単数形に対して「エロヒーム」単数形だけでなく、複数形としても動詞を受ける名詞なのだそう。ですから聖書の中でも「エロヒーム」は「神」とも「神々」とも訳されています。
例えば、創世記の1章26章にはこのような記述があります。
「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。」
え、我々って?!神様って一人じゃなかったの?
と言うわけで、聖書はさまざまな古代の神話の寄せ集めに過ぎないとか、シュメール神話の焼き直しとか言う人も多いですよね。ここ、私も結構気になってました。
神学的にはどう説明されていたのかというと、神は単数とか複数とか単純に掴み取れるものではない深遠な存在であることの表現、あるいは父-子-聖霊の三位一体の表現である、と言うのがこれまでの一般的な解釈のようです。
ところが、ハイザー氏は様々な聖書の箇所、(特に詩篇の88章)を参照しながら、「エロヒーム」とは単に神や神々だけではなく、いわゆる全ての「霊的な存在」を示す「カテゴリー」用語だ、という説を導き出します。つまり神も神々も、天使も悪魔も、その他諸々の異教の神々、霊的な存在、亡くなって体を抜けた人間すら「エロヒーム」なのです。
その「エロヒーム」の中の最もいと高き存在、最高位のエロヒームが「ヤハウェ」なのだと言います。つまり、私たちが住んでいるこの地上に対し、天界が重なり合うように存在し、そこには「ヤハウェ」だけでなく、忠実な御使いである天使や、反抗者の悪魔、異教の神々などなどが活動し、地上に働きかけ、霊的な駆け引きを繰り広げているのです。聖書の世界は、ひとつの神だけが住む単調なものではなく、むしろ多神教的とさえ言えるわけです。「ヤハウェ」はその中で最高位の存在で、人間や動物、自然だけでなく、天界のエロヒームたちをも創造したとされます。
ではなぜ、ヤハウェを唯一の神とせよと繰り返し聖書の中で述べられているのでしょう?ハイザー氏は「エロヒームは沢山いるけれど、ヤハウェという存在は唯一無二であり、彼のような存在は他に存在しない。」と言う意味だと解説します。他の神々を「神」と崇めるののではなく、「ヤハウェ」ただ一人を「神」とせよという意味で、他の「エロヒーム」は存在しないとか、全て悪魔という単純な話でもありません。
カテゴリーとしての「父」は世界に数多く存在しているけれど、私にとっての「父」は一人しかいません。隣の家のお父さんを私は「父」とは言いません。私がもし隣の家の男性を「父」と呼んで慕ったら、きっと本当の父は傷つくに違いありません。そんな感じでしょうか。
要するに日本には日本のエロヒームがいて、インドにはインドのエロヒームがいる。
例えば、聖書の申命記32章8節にこんな御言葉があります。
「いと高き神が国々に嗣業の土地を分け
人の子らを割り振られたとき
神の子らの数に従い
国々の境を設けられた」
それぞれの国にその土地を管理する神々がいるというわけです。その時「ヤハウェ」が自分に割り当てた国が「イスラエル」なのです。日本は多神教の国で、一神教的な世界観は相容れないと言う記述や言動を色々なところで目にすることがあります。でも、この視点だと、自然にスッと入ってきませんか?やっぱ、そうだよね〜って思いません?
まあ、世界中あちこちで「うちらの神(神々)が一番偉いんや~!」という神の推し活が繰り広げられているとも言えるのかもしれません。
しかしハイザー氏の学説、斬新でさぞかし異論も多いのだろうなと思いきや...
「バイブル・プロジェクト」と言う、広く知られる聖書動画シリーズ(日本語版あり)で、「エロヒム=霊的存在」論がちゃんと解説されておりました。すでに海外では広く受け入れられている学説なのでしょうか。
確かに神々が他にいたとしても「ヤハウェ」の唯一性が失われるわけではありませんし、むしろ日本人にとっては「エロヒーム=様々な霊的存在」として聖書を読む方がずっと、理解しやすくすんなり聖書の世界を受け入れられるように思います。
マイケル・ハイザー氏の本、いつか日本語で出版してほしい!
下記におすすめ動画をアップしておきます。⇩